また落ちた…。簿記3級にすら合格できないなんて、向いていないのかな。
周りは楽勝で合格しているのに、自分だけ何回も落ちて恥ずかしい。
「簿記3級は簡単」「誰でも取れる」
という噂があります。
実際に勉強してみたら「全然簡単じゃないじゃん!」と気づくと思いますが、それでも落ちるとショックですし、心が折れそうになりますよね。
私は根性論が嫌いなので「勉強を続ければ必ず合格できる」とは言いません。
でも、失敗を分析し対策を講じることで合格できる可能性が格段に上がります。
そもそも簿記3級は簡単じゃない
あなたが落ち込んでいる理由が「簡単な試験なのに落ちた」ということであれば間違いです。
簿記3級の合格率はおよそ40%ですので、1回目で合格する方が少数派です。
高学歴の人、難関資格に合格している人でも平気で落ちます。
(合格者の声の方が大きいので、印象とは違うかもしれませんね。)
合格率から考えると3回目以降で合格する可能性が高いです。
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | |
合格(%) | 40% | 64% | 78% | 87% | 92% |
「もう5回も落ちてるんだけど…」
という方は、闇雲に勉強しても体力を浪費するだけですので、勉強の方向性を変えましょう。
ちなみに「センスや向き不向きは全くない」と言えば嘘になりますが、センスがなくても合格はできます。
人より少し時間がかかるかもしれませんが、正しい勉強を十分に行えば可能です。
そもそも簿記3級で「センスがない」と決めつけるのは早計です。
最初からセンスのある人なんてそういないですし、大多数の人にとってセンスは磨くものです。
私もそのうちの一人で、一番最初に受験した簿記3級は合格点ギリギリでしたが、今では公認会計士をやっています。
正しく簿記を勉強してセンスを磨いていきましょう✨
敗因と今後の対策
本試験の結果で、あなたの現在地と足りないものが大体分かります。
満点を目指すのは素晴らしいことですが、大多数の人にとって現実的な範囲内での「理想的な点の取り方」があります。
大問ごとの特徴と理想の得点方法をご紹介します。
第1問 | 第2問 | 第3問 | |
---|---|---|---|
理想的な点数 | 39 / 45点 | 10 / 20点 | 29 / 35点 |
理想的な得点率 | 87% | 50% | 83% |
出題内容 | 期中仕訳 | 帳簿(総勘定元帳/補助簿)、伝票、理論 | 決算整理(財務諸表/精算表/試算表) |
難易度 | ★ | ★★★ | ★★ |
コメント | 難易度が相対的に低い上に配点が高いため、確実に得点したい | 出題範囲が広く対策しづらい割に配点が低いため、頻出論点だけ押さえれば十分 | 理解が難しい論点ではあるが、出題内容がパターン化されているため積極的に得点したい |
第1問→第3問→第2問の順で得点したいところです。
特に第2問は初見の問題が多く不安になりやすいですが、頻出論点だけ押さえて深追いしないのが得策ですので、点数としては半分取れていれば十分です。
では、次にあなたの本試験結果と照らし合わせてみましょう。
理想的な得点配分と比べて、特定の大問で偏りがありますか?
偏りの有無で対策が異なります。
あなたはどれに当てはまるでしょうか?
満遍なく点数が取れていない人
すべての大問が理想的な得点配分から離れている人は、そもそもの勉強方法が誤っている可能性があります。
よくある間違った勉強法を説明してきますので、当てはまっていないか確認しましょう。
インプット中心の勉強
テキストや講義動画を見て満足していませんか?
簿記に限らず、勉強は「わかる」「やってみる」「できる」の3ステップが必要で、見ているだけでは「わかる」止まりです。
野球に例えると、バットの振り方をコーチに教わっても、自分で実践・練習しないと打てるようにならないですよね?
簿記もスポーツや楽器と同じで、実際にやってみないとできるようになりません。
インプット3:アウトプット7が理想です。
既に本試験を受験している人はなおさらです。
アウトプットは気力も時間もかかりますが、ここを疎かにすると検定試験にも合格しないですし、実務でも役に立ちません。
テキストを眺めているだけ
答えを見ながら問題を解く
ある程度理解したら自分で解いてみる
自分で考えてから答えを見て、間違えた問題はできるようになるまで反復する
不合格になった後すべきことは、テキストを見返すことではなく、自分で手を動かして問題を解くことです。
(テキストの振り返りも大切ですが、アウトプットを中心にしましょう)
好きな問題だけ解いている
「できない」問題を「できる」ようにするのは体力を使いますよね。
例えば、決算整理の経過勘定(前払費用など)が苦手な人は多いです。
何度見ても分からないと嫌になってきて、本試験で出ないといいなーと祈りながら受験する人もいます。
しかし、苦手な論点から逃げて好きな論手だけに取り組んでいると、当たり前ですが合格が遠のきます。
3級の範囲は狭いので、特定の論点を捨てると大きく失点する可能性があります。
例えば経過勘定は、第3問以外に第2問でも出題されやすいので、丸々捨てると厳しいです。
また特定の論点を捨てるということは、他の問題で間違えられなくなるので首が締まります。
得意な問題だけ積極的に解く
苦手な問題は自分で考えず、すぐに答えを見る
得意な問題は忘れない程度に振り返る
苦手な問題ほど自分で時間をかけて考え、得意分野へ変えていく
辛い作業ですが、できるようになった時の達成感は格別です。
苦手分野へ真摯に向き合いましょう!
ポイントを意識せず、反射で解いている
これもあるあるです。早押しクイズのように反射で答えていませんか?
簿記は丸暗記では通用しません。
普段からポイントを意識して理解し、本試験でもポイントを押さえながら解くのが理想です。
例えば、第3問で頻出の『現金過不足』の論点ですが、時系列を意識することが大切です。
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先に生じた現金不足額600円の原因を調査していたところ、このうち400円は通信費の支払いが記帳漏れであることが判明した。この場合の仕訳を答えなさい。
答えは何でしょうか?
「現金」勘定が出てきた人は、まさに反射で解いている人です。
帳簿では現金残高10,600円と記録されていたが、金庫内の現金有高を実査したところ10,000円しかなかった。原因不明のため、相手勘定は現金過不足勘定で処理する。
現金過不足 600 / 現金 600
②原因判明
仮勘定である現金過不足勘定から適切な勘定(通信費)へ振り替える。
通信費 400 / 現金過不足 400
③決算
最終リミットである決算日までに原因が判明しなかったため、雑損勘定へ振り替える。
雑損 200 / 現金過不足 200
今どこまでが終わっていて、どこが聞かれているのか?意識する必要があります。
今回は現金不足額が「先に生じた」とあるので、①までは終わっていますよね?
①の仕訳はすでに切られているので、②だけを答えます。
このようにポイントを意識せず仕訳を丸暗記すると、手ごたえがあっても実際には不正解であることがあります。
暗記も大切ですが、漠然と覚えるのではなくポイントと紐づけて学習しましょう!
特定の大問だけ点数が取れていない人
特定の大問だけできていない人は、勉強方法は大きく間違っていないかと思います。
それぞれの大問ごとに対策方法が異なりますので、順番に説明していきます。
ちなみに第2問・第3問はできて、第1問だけできない人は考えづらいので、第2問と第3問ができない前提で話します。
第2問ができない人
第2問は出題範囲が広い割に配点が低いコスパの悪い大問なので、最低限「守る」戦略がベターです。
ですので理想的な正答率は50%程度ですが、ほぼ0点に近い人はさすがに対策が必要です。
最低限下記の論点を押さえましょう。
補助簿の選択…取引から補助簿を推定
補助簿:商品有高帳…先入先出法/移動平均法
特に帳簿の締切りに伴う決算振替仕訳は、ノーマークの人が多いです。
(各収益・費用勘定→損益勘定→繰越利益剰余金勘定への振替)
頻出論点ですので、必ず押さえましょう。
残りはテキストをざっと見る程度で十分です。
手を広げすぎず、頻出論点を完璧にしましょう!
第3問ができない人
第3問が苦手な人はとても多いです。
第1問は実際に行われている取引(商品仕入れなど)なのでイメージしやすいですが、第3問の決算整理は実際に取引が行われているわけではなく、適切な財務諸表を作成するために机上で修正しているのでイメージしづらいです。
決算整理は期中取引以上に「理解」が重要です。
具体的な内容は誤った勉強方法を参照してください。
どうしても分からない場合は、人に聞いてしまいましょう。
あなたの現在地と今後の対策は分かりましたか?
以上、現在地ごとに今後の対策について話してきました。
「記事を読んでもどうしたらいいか分からない…」という人は、パーソナル簿記で学習相談を受け付けていますので、気軽に相談してください。
ちなみに、簿記3級をすっ飛ばして2級を受験する人もいますが、個人的にはあまりオススメしません。
「会社から2級までの合格期限を決められている」など特別な理由がない限りは、3級で基礎を固めて成功体験を積んでから2級へ進むことをお勧めします。
2級は本当に難しく時間もかかるので、3級も合格しないようでは現実的問題として2級に合格できません。
モチベーションが落ちたり焦る気持ちはよく分かりますが「急がば回れ」です。
簿記に限らずですが、実力は右肩上がりではなく、突然急上昇します。
それは点と点が線で繋がる瞬間があるからです。
あなたはまだ点を積み上げている状態だと思います。
成長していないように感じるかもしれませんが、あと一歩のところですのでもう一度向き合ってみましょう!