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簿記って何?
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会社の経営活動(取引)を帳簿に記入することです。
簡単に言うと、家計簿の会社版です。会社の活動を定量的に記録します。
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簿記の資格があるの?
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主催団体によって、日商簿記、全商簿記、全経簿記の3種類があります。
日商簿記の受験者が最も多く、一般的に「簿記の資格」と言えば日商簿記が挙げられます。
日商簿記には5段階のレベルがありますが、まずは簿記3級を受験することがポピュラーです。
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簿記って仕事に生かせるの?
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簿記が直結する仕事として下記が挙げられます。
- 事業会社の経理部、財務部
- 会計事務所、税理士事務所
- 会計コンサルティング
- 金融業(銀行/証券会社/保険会社など)
- 会計に関わる商品の営業職(会計システムの営業など)
- 会社経営(役員)
- 投資家
これらの仕事をする場合は、簿記を知らないとかなり困ります。
初心者にも分かるように簡単に説明していきます。
目次
簿記とは:会社の経営活動を記録すること
簿記とは「帳簿記入」の略で、会社の経営活動(取引)を帳簿に記録することです。
家計簿の会社版ですね。
会社が土地を購入した、借り入れを行った、仕入れた
など、会社の取引を一定のルールのもと帳簿へ記入するのが簿記です。
簿記の目的:利害関係者へ情報を提供すること
企業にはたくさんの利害関係者がいます。
例えば、あなたが投資家だったとします。
どの株式へ投資するか、またはしないかを、どうやって判断すれば良いでしょうか?
また、あなたが銀行員だったら、融資を実行するかどうか、どうやって判断しますか?
これらの判断材料を定量的に提供するのが「財務諸表」です。
財務諸表とは、簿記によって作成された企業の報告書です。
財務諸表には、貸借対照表と損益計算書があります。
- 貸借対照表…企業の財政状態を表す報告書
- 損益計算書…企業の経営成績を表す報告書
貸借対照表とは
貸借対照表を見れば、会社の財政状態が分かります。
資産・負債・純資産の3つの要素で、定量的に表現します。
例えば、あなたが以下の状況だとします。
- 貯金が300万円ある
- 100万円の車を所有している
- 車のローンが80万円残っている
この場合の貸借対照表は以下のようになります。
簿記を知らない人は「資産」に注目しがちですが、簿記を習ったことのある人は「純資産」を重要視します。
貯金300万円と100万円の車を持っていても、カーローンの80万円を差し引いた、「純資産」320万円が会社としての価値になります。
貸借対照表は、会社の「財政状態」を表します。
経営活動で頑張った「結果」とも言えます。
損益計算書とは
損益計算書を見れば、会社の経営成績が分かります。
収益・費用・利益の3つの要素で、定量的に表現します。
貸借対照表に比べるとイメージしやすいですよね。
例えば、以下のように儲けたとします。
- 服を3,000円で製造した。
- その服を5,000円で販売した。
この場合の損益計算書は以下のようになります。
簿記を知らない人は「利益」に目が行きがちですが、簿記を習ったことのある人は、「収益」と「利益」の明確に区分しています。
損益計算書は、まさに経営活動を頑張った過程を表しています。
簿記の基礎<基本ルール>
以上が簿記の目的=最終ゴールですが、みんなが好き勝手に帳簿を記入をしていたら、標準化されず読みづらいですし、良く見せようとする会社が出てきてしまいますよね。
そこで、会社の取引を記録するにあたり、一定のルールを設けています。
これらのルールを学ぶのが、簿記の勉強です。
取引を帳簿へ記入することを「仕訳」といいます。
- 5要素に分類される勘定科目を選択する
- 勘定科目と金額を貸借に分ける(右と左)
例えば、あなたが車をローンで購入したとします。
この場合、以下のような仕訳になります。
正解があるので、慣れればパズルのようで楽しいです。
このようなルールを学んでいくのが、簿記の勉強です。
簿記の資格は3種類!
簿記の資格試験には、主催している団体によって3種類あります。
日商簿記 | 全商簿記 | 全経簿記 | |
主催団体 | 日本商工会議所 | 全国商業高等学校協会 | 全国経理教育協会 |
受験者数 | 約50万人/年 | 約16万人/年 | 約3万人/年 |
合格率 | 3級:約35% | 約50% | 約60% |
受験方法 | ペーパー試験/ネット試験 | ペーパー試験 | ペーパー試験/ネット試験 |
受験者層 | 全員 | 商業高校の学生 | 専門学校の学生 |
商業高校や専門学校の学生さんを除いて、多くの方が日商簿記を受験しています。
受験者数は、年間50万人と大人気の資格です。
年間50万人というのは、大学入学共通テストの受験者数と同じくらいなので、すごい規模感ですよね。
大学生や社会人の方が受験する場合は、日商簿記一択です。
日商簿記は、まずは3級からスタート
日商簿記は、5つのレベルがあります。
- 原価計算初級
- 簿記初級
- 3級
- 2級
- 1級
ただ、原価計算初級と簿記初級は、年間の受験生数が合わせても5千人に満たないので、一般的には3級からのスタートになります。
3級 | 2級 | 1級 | |
受験者数 | 約33万人/年 | 約15万人/年 | 約2万人/年 |
合格率 | 約35% | ペーパー試験:約15% ネット試験:約35% | 約13% |
受験方法 | ペーパー試験 ネット試験 | ペーパー試験 ネット試験 | ペーパー試験 |
勉強時間 | 100~150時間 | 300~500時間 | 500~1,000時間 |
科目 | 商業簿記 | 商業簿記(連結あり) 工業簿記 | 商業簿記(連結あり) 工業簿記 |
位置づけ | 入門編 | 大規模事業会社 製造業向け | 泊付けになるレベル |
採用者からの目線 | 最低限持っていてほしい | あると有利 | 一目置かれる |
何ができるようになる?
3級は入門編だと言われおり、
財務諸表を作る側(経理など)にとっても、読む側(経営者など)にとっても
必要最低限、簿記を理解できます。
- 簿記の基礎や流れを理解する
- 必要最低限、財務諸表を読めるようになる
一方で、2級まで取得すると、工業簿記・連結会計などが範囲に加わりますから
以下のような会社を数字面で理解するのに役立ちます。
- 製造業
- グループ会社
そのほかにも3級からグレードアップしている論点が多数ありますので、2級を取れば「ひと通り理解した」と言えます。
1級にもなると、さらに難易度の高い論点も扱いますから、大手グループの親会社向けです。
難易度と採用担当者からの印象
簿記が直結する仕事に就くのであれば、3級は必ず持っていてほしいレベルです。
対して2級は、2017年頃から1級の範囲が2級に下りてきたため、近年の2級は本当に難しいです。
以前は、簿記2級が中小企業レベル、1級が大企業レベル、と言われていましたが、今や2級も十分大企業レベルになっています。
したがって、3級を合格した人でも、2級は長期戦になります。
一方で、簿記2級が難化してから期間が浅いので、企業採用者が情報をキャッチしていない場合、実際の難易度と採用担当者からの評価にギャップが発生することがあります。
こればっかりは、時間が解決するのを待つしかないですね。
とは言え、2級を持っている人口は3級の半分ですから、就職は一段有利になります。
1級は、税理士試験の資格を得られるため、税理士志望の方が受験するケースが多いです。
希少性が高いので、就職時に有利になることは間違いありませんが、
一般の方が受験する分には費用対効果は低めです。
簿記って仕事に生かせるの?
程度の差はあれど、すべての会社で財務諸表を作成する義務がありますので、必ず簿記が必要になります。
なかでも以下のような職種は、簿記が直結する仕事です。
- 事業会社の経理部、財務部
- 会計事務所、税理士事務所
- 会計コンサルティング
- 金融業(銀行/証券会社/保険会社など)
- 会計に関わる商品の営業職(会計システムの営業など)
- 会社経営(役員)
- 投資家
※財務諸表を作成する側なのか、読む側なのか、立場の違いがあります。
ただし、以上のような職種でも、簿記を持っていない人はいます。
経験値である程度カバーできるのも事実ですが、それでも限界があります。
- 財務諸表を作成する側…作業としての簿記になるので、全体像や内容の理解はしづらい。
- 財務諸表を読む側…損益計算書は何となく分かるが、貸借対照表は分からない。表面的なことしか読み取れない。
また、採用される難易度が上がります。
人手不足の世の中ですが、簿記が直結する仕事であれば、最低限3級を持っていないとなかなか採用されません。
仮に入社できても入社後に苦労します。
簿記を勉強すると、一歩上のレベルで仕事ができます。
- 財務諸表を作成する側…目的、全体像を分かったうえで仕事ができるので、自ら問題提起できる
- 財務諸表を読む側…基礎が分かっているから、問題点に気づきやすい
私も事業会社の経理部におりましたが、簿記を分かっている人とそうでない人とは「会話」のしやすさが段違いです。
簿記は「ビジネスの共通言語」と言われているくらいですから、特定の職種では知らないと困ります。
簿記が直結しない仕事でも、3級くらいはもっていると、よりビジネスを理解できます。
結論:費用対効果で判断しましょう
何かの勉強を始めるとき、私は「費用対効果」を考慮すべきであると考えています。
すべての勉強は無駄ではありませんが、そこに費やす時間・労力・お金に見合う価値があるのか?考える必要があります。
簿記は、かなり効果の高い資格勉強ですが、人によって費用対効果は異なります。
あなたにとって費用対効果が高いのかどうか、考えてみてください。
とは言え、簿記のルールは世界共通です。
簿記を勉強すれば一段レベルアップした仕事、考え方ができます。
ぜひ検討してみてくださいね。